SENN Project Japanese: 山本亮二インタビュー (2001年、ドイツ Freedom BMX)

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2006年06月28日

●山本亮二インタビュー (2001年、ドイツ Freedom BMX)

2001年に初めて海外の雑誌にインタビューを載せたのが、当時知り合ったばかりのヤンマーこと山本亮二のインタビューだった。イチキュッパの安っちいデジカメで必死に撮った写真と、つたない英語で、「本当に載るんかいな」と思いながらドイツに原稿を送ったのを思い出す。
この雑誌に写真が載ったのを気に、自分の写真があまりにもショボすぎて、ライダーにも申し訳ないし、自分でも恥ずかしいくなり、25万をかけて新品の一眼レフ、魚眼レンズ、そしてフラッシュを買い揃えたのだった。

僕が山本亮二を最初に見たのは、98年、初めてのKOGだった。その年から、ドラゴンフライのサポートを受けるようになって、全国を回り始めた彼は、瞬く間に日本のトップライダーの仲間入りを果たす。
去年、アメリカ、ヨーロッパのコンテストを中心に回り、好成績はもちろん、海外の雑誌、有名なBMXのホームページにも多く取り上げられるなど、そのスタイルにおいても世界に認められる実力の持ち主だ。
 KOGの運営に関わり、日本で数少ない、乗ることだけで生活しているプロライダーとして、日本のフラットランドシーンを引っ張る1人であるヤンマー。彼の目には何が映っているのだろうか?
 
名前、年齢、ライディング歴は?

山本亮二、23歳、ライディング歴は6年。

自転車を始めたキッカケは?

同じ地元の幼なじみが、自転車(BMX)を使って技をしていたんだ。それでいつも一緒に遊んでいたヒロと、「カッコイイ!」と思ってヒロ君が最初に乗り始めて、僕もすぐに乗り始めた。

最初の大会とかは?

うーん、全然覚えていないね。確かヒロ君と行った広島の大会が初めてだったと思う。

その頃誰がプロだった?

カッパ君、E君(尾西邦友)、あっちゃん(尾西あつし)、ジャニーさん、アキラ(岡村旭)、ゴリさん(後藤タカヒロ)とか。

今のヒロ君との関係はどう?よく会ったりするの?

大会会場以外ではあまり会わないね。でも一番刺激を受けているライダーだよ。

ドラゴンフライにサポートされているけど、そのキッカケは?

 僕が大阪とか、福岡の大会に出るようになって、「サポートが欲しい」みたいなことを口にしていたんだと思うんだけれど、それを聞いたアキラが、僕とヒロ君の2人に、ドラゴンフライのサポートの話を持ちかけてくれたんだ。

去年はドイツの世界戦で7位、って成績を残したけれど、その前にアメリカであった大会の様子をビデオとかで見ると、メチャクチャ硬くなっていて、いつものヤンマーじゃないみたいだった。どうして?

 アメリカでの最初の大会(2000年、フロリダCFBコンテスト)のこと?その時は、「勝ちに行く」っていうより、「状況を見に行く」つもりで行ったからね。その時に限らず、僕は「初めて」っていう時は慎重になるんだ。日本でも、関西の方のコンテストでは成績を残していたけれど、98年に、初めて関東に出て来た時とか、他のライダーが何をやっているか知らなかった。それで最初は何をやっているのか、そのライダーがどういうコンセプトを持ってそのトリック、コンボをやっているのかをよく観察して、全部頭に入れて、次の年から成績を残せるようになった。まあ、ちょうどそのころスポンサー(ドラゴンフライ、ジックジャパン)が付いたこともあって、成績を残す責任が出て来たっていうのもあったけれど、とにかくそういう風に、周りの状況を整理してからじゃないと、自分のライディングに集中出来ないんだ。
 例えば、自分が色々トリックが出来る中で、ローンモアスピンだけは出来ないとする。それで、ある大会で、ペダリングローリングローンモアスピンをやっているライダーを見たとする。そりゃあビックリするよね。
その時点で、そのライダーをよく見て、自分が何に衝撃を受けたのか、それが自分のスタイルと比較してどうなのか、ってことを自分なりに整理してからじゃないと、その先、冷静にライディングが出来なくなるんだ。自分のスタイル、コンセプトを見失ってしまうんだ。その「観察する期間」が、僕にとってはアメリカでの最初の2戦(フロリダ、ノースカロライナのCFB)だったと思っている。
 その後すぐにドイツで世界選手権があって、そこではプロで7位って成績を残せたのは、世界選手権で、決勝に残っていたライダーは、ほとんどアメリカの大会で見ていたライダーばかりだったんだ。それで「状況を見る」っていうプロセスが省けて、プロに出場して成績を残せたんだ。

ヤンマーはフロントのトリックのみに集中しているけれど、それはどうして?

 別に、最初からフロントにこだわっていたわけじゃない。むしろ最初はリア系の技ばかりやっていた。そのうち始めて1、2年くらいしたころからペダル技が流行り始めて、僕も練習したんだけれど、その頃から乗りこんでいたから、すぐコースターが壊れるようになった。取り替えても1ヶ月くらいですぐペダルが回るようになっちゃって、そうするとスネには当たるは、ジャマになるはでイヤになっちゃったんだ。そんな時ビデオでチャド(ディグルート)とかアンドリュー(フェアリス)がフロントトリックをカッコよく決めている姿を見て、「これからはフロントでしょう!」ってフロントをやるようになった。

影響を受けたライダーは?

 沢山いる。日本人ではE君とあっちゃんからはスタイルで影響を受けた。陽介(宇野陽介)からは勝負としてのライディング、完成度とかの大切さを学んだ。外人ではマーティだね。オリジナリティ、難易度、完成度どれを取っても文句のつけようがないし。それとさっきも言ったアンドリューとチャドからは、スタイルの大切さを教えられたね。
チェイスとケビンから影響を受けた、って言うライダーがよくいるけれども、それは影響というより、全てのニュートリックライダーのベースだからね。「影響」ではないな。少なくとも僕にとっては。

ビデオとかはよく見る?

 アンドリューとチャドからは、スタイルの大切さを教えられたって言ったけれど、それはビデオで見たのがキッカケだからね。出るビデオ全部見るような奴と比べたら、そこまでは行かないけれど、よく見る方だと思うよ。確かに、ビデオの映像は最新ではないけれども、少なくとも最近のそのライダーのコンセプト、スタイルは分かる。
 プロでやって行く上で、誰かが既にやってしまっているコンセプト(トリックのみでなく、コンビネーションのアイディアの根源)は避けるようにしないと、自分のライディングの価値が無くなってしまう。それに、自分のスタイルを再確認するのにも使うし、大会でライダーのライディングを見て、そのライダーがビデオでやっていたトリックから、今じかに見たときと比べて、どれだけ進歩したか、っていうことも分かるし。ビデオを見ることは大切だよ。あらゆる意味でね。ビデオは出来るだけ見るべし!

(宇野)陽介とか、すごくBMXをビジネスとして捉えている面があって、自らブランドを立ち上げて、乗るだけではなく、それから後のことに繋げているけれど、その辺をどう考えている?将来、というか、未来の展望は?

僕も、何か未来に確信を持って乗れているわけじゃないんだ。どうなるかわからない事の方が多い。でも、乗ることが好きで、上手くなりたい、と思っているのは確かで、上手くなることで、なにかが見えてくるんじゃないか、って思っているところもある。今、模索中って感じだね。

日本中、色々な土地を回っているけれど、日本では、どこが1番乗るのにいい環境?

 ライディング的には神戸、大阪、名古屋だね。雨でも、夜でも、昼間でも乗れる場所があるから。でも乗る場所が狭くても、ライダーが楽しく、集まって乗っているところはどこでも好きだよ。

スケートボードでは、ビデオの売上だけで生活できる、しかも多くのスケーターから絶大な支持を受けている、チャド マスカのような人もいるけれど、ヤンマーはビデオとか、雑誌とかのメディアについてはどう考えている?

 スケートボードで、ビデオだけで生活できる人がいるのは、それだけのシーンがあるからだよね。フリースタイルもフラットに限らずシーンが出来てくれば自然にそうなっていくと思う。あとメディアだけれど、ビデオに関して言えば、フラットはスケートボードとかと比べてトリックも多いし、ある意味、もっと表現の可能性が大きいと思う。だから予想がつかない。雑誌については、ページが取れれば、もっと「クリーム」(フランスのBMX専門誌。アーティスティックな構成で知られる。)みたく、構成は単純に右側のページに写真1枚、左に文章でいいから、パッとみて、「あっ、これカッコイイ」っていうページ、切り取って壁に貼りたい、って思うようなページを2,3ページ作らないとダメだね。僕なら「カッコイイ!」って思ったら、それだけで買うね。絶対。たぶん、みんなそうだと思うけれど、BMXを始めたキッカケは「カッコイイ」って思ったから、っていうのが多いと思う。はい、こういうパーツがあります、いくらです、っていうのが沢山載っていても、誰もそんなの買わないよ。雑誌はもっと「イメージ」を大切にするべきだね。イメージの影響力を考えるべきだ。

「プロ」の定義って何?技術的なもの?それとも精神的なもの?または他の何か?

大前提として、高い技術がないとダメだよね。それと強い向上心。オリジナルであること。誰も持っていないコンセプトをもつこと。そして、自分の考えを表現しようとする、外に伝えていこうとする人だね。

自転車以外にハマッているものってある?

 オモチャ、それも想像力をかきたててくれるような。この間、カナダの大会に行ったときに万華鏡を買ってきたんだけれど、裏が透明で、万華鏡の中に入っている色紙の模様だけじゃなくて、外の景色が映るから、おもしろいんだ。
そういうのに興味があるね。

KOGに深く関わっているけれど、これからのKOGの展望を聞かせて。

 僕自身はKOGでジャッジの取りまとめをやっているけれども、誰に言われたでもなく、みんな自然にジャッジ、ライディング、音楽、雑誌、みんなそれぞれの方面に責任を持って頑張っている。それをそのまま続けて行ければいいと思う。意外と思うかもしれないけれど、焦らず、ゆるやかに成長していけばいいと思っている。あまり急激に大きくなっていっても、訳のわかっていないメディアが押し入ってきて、僕らのイメージとは違うように世間に広められるのも怖い。僕らが言うこともゆがめられる可能性も高いしね。そうすると、BMXを知らない、一般の人からは「なんだあれ」ってことになって、簡単に潰されてしまう。
でもゆるやかに大きくなっていけば、シーンも確実に広がっていくし、そうやってメディアからの情報からでなく、ライダーを見て、大会を見てBMXを知った、という「生」の経験からBMXを知る人が増えれば、訳のわかっていないメディアが入ってきた時も怖くない。
 コンテストの位置付け、っていう面からすると、コンテストは大きく分けて、3つのタイプに分けられると思う。1つはX-GamesとかCoreXみたく、大金がかかっていて、世界中からライダーが集まってくるもの。
 2つ目は、駒沢宴会や、デラウマカップのように、地域に密着していて、フリースタイルっていうものを本当に楽しめるような大会。
 最後にKOG。世界のトップライダーが集まるコンテストでありながら、始めたばかりのライダーも参加できるような大会を目指したいと思っている。最近、みんな海外に気軽に出ていくようになって、いいことではあるけれど、外にばかり目がいっても、母屋がしっかりしていないとね。僕らがこうして海外の大きな大会で成績を残せば、海外からもトップライダーが日本に来るようになって、日本にいながらにして世界最高レベルのコンテストを見ることが出来るし、それが日本のシーンを刺激していくんじゃないかな。

KOGのジャッジングについて、どういうコンセプトで行くんだろう?

 ベースには世界を意識した高いレベルのジャッジだね。更に、臨機応変に変化させて行く。これから海外からのライダーも多く来るようになるだろうし、ライディングのレベル、スタイルも刻一刻と変化している。だから場合に応じて、柔軟に対応できるジャッジシステムを作って行ければ、と思っている。

スランプ、とかはある?

 基本的に、あるコンボが出来たらそれがほぼ完璧になるまで練習して、次に新しいコンボに挑戦していくけれど、その合間にコンテストがある。だから、必ずしも完璧になったトリックをベストの状態で大会に出せるわけではないんだ。次のコンボに挑戦し始めたら、出来るようになったコンボはあまりやらなくなるし、そうするとメイク率も落ちる。でも新しいトリックに挑戦していかなきゃならない。だから1つのコンボが出来て、次に移る間が全部スランプだね。

ヤンマーの「Mike.S bar理論」って?

 ずーっとフラットランドが「メジャー」になるには、って考えていて、ちょうどそんな時、シャーリー(石谷篤)の家で、X-Gamesのビデオを見た時にヒラメイたんだ。
 みんなも知っていると思うけど、アメリカで、BMXフリースタイルの中でも一番人気のあるカテゴリーがバート、次にストリート、ダートジャンプ、で大きく離れて最後にフラットランド、って感じだけれど、その人気の差はどこから生まれるのか、って考えたら、根源には、「分かりやすさの差」があるんじゃないか、って思った。
 バートを取ってみると、マット・ホフマンとかのライディングは、イメージしやすいし、見た目も凄い。映像を見ているだけでも、マット・ホフマンの凄さ、デイブ・ミラの凄さ、っていうのはビンビン伝わって来る。つまり、頭の中で、自分が彼らになったような気分でイメージが膨らむんだ。バートに1度も入ったことのない僕でもね。全くのシロウトの人でも、ある意味、「バート」の本質は感じやすい。ストリートもまた、バートに近い所があるから、リアルストリート系やテクニカルなトリックは別にして、ボックスや、クォーター、ウォールを使った動きの大きなライディングも理解しやすいに違いない。
 でも、僕とかの経験からすると、フラットランドの場合、「ちょっとなんかやって見せて」って言われて、難しいコンビネーションを見せても、みんな大して驚かないし、「俺にも出来る」って言う奴が結構いる。で、やらせてみて初めて、その難しさを分かってくれるんだな。つまりこれが、「分かりにくい」ってこと。
 話は本筋に戻るけれど、そのシャーリーの家で見ていたビデオで、マイク(スタイングラバー)のちょっとしたインタビューとライディングがあったんだ。そこで、数多くいるライダーの中でも、何故マイクが取り上げられたのかな?って考えたときに、僕らフラットランドに深く関わっている人間は、トリックがグーフィーか、普通か、とか、ハンドルが逆か、そうじゃないか、ってところも見るけれど、観客はそんなことは気にもしないよね。ライディングにブレーキがどう関わってくるかなんて、想像もつかないと思う。でもマイクのハンドルバーは、裏表が無くて、しかもブレーキをつけてない。つまりシンプルなんだ。ライディングも、高度ではあるけれど、「魅せる」ライディングだよね。
 マイクのハンドルバーは、表裏が無いから、絶対使いやすい、って思うのに、みんな使わない。っていうのは、みんな、フラットがメジャーになって欲しいとは思っていても、どこか心の底で、フラットランドを「分かりにくいもの」、「アンダーグラウンドなもの」にしておきたい、って思っているからなんじゃないかな、って感じたんだ。自分も含めてね。だから、「Mike S bar(マイクのシグネチャーハンドル)をどう思う?」って質問することで、そのライダーの深層心理が分かる、かもしれないって質問のこと。

最近、沢山のライダーが海外の大会に出て行っているし、大会以外でも海外に出ていくライダーが多いけれど、そのことについてどう思う?

 基本的に良いことだと思う。どんな姿勢で行っても、視野が広くなって帰ってくるね。みんな。大会にシリアスに取り組もうとする奴は、とてつもなく上手いライダーを見て、1度は落ちるけれど、逆にそれが自分のライディングの方向性を定めてくれて、自分のスタイル、BMX全体に対する目、考えがしっかりしてくるし、観光気分で行く奴も、「観光気分」で行けるってことは、それだけ海外の距離が近く感じている、ってことでしょ?そうやって気軽に外に出ていく、頻繁に出ていくことになれば、友達が沢山出来て、あっちからライダーが来るようになったり、そこでの経験を日本に帰ってきて他のみんなに話してくれることで、更に多くのライダーが外に出ていくキッカケになる。
 僕に限らず、KOGを運営しているライダーは、とにかく日本のシーンを大きく、そして「根付かせて」いかなければならないと考えている。根付かせる、ってことは、ライダーの連鎖が起こらないとダメなんだ。つまり、友達からその友達、親から子へ、っていうような。
 それには、プロになろうとする本気のライダーも必要だけど、そこまでは考えていなくても、BMXが好き、っていうライダーにも、どんどん見聞を広げてもらいたいんだ。(宇野)陽介は「エコ」(エコロジー、再利用、循環、って意味で使っているとの事。)って言ってるんだけど、今まで乗っていたライダーが乗らなくなっても、そのライダーから「BMXっていいよ」って聞いて乗り始めるライダーが、またその次に繋いで行ってくれるかもしれない。これが僕らの目指すところなんだ。

タイのAsian X-Gamesに行ったりしてるけど、タイのフラットシーンはどう?

レベルは日本のエキスパートレベルだけれど、近い将来、日本のプロレベルに追いつきそうなライダーが何人かいた。それと、上から下のクラスまで、とにかく決める。完成度が高い。それはAsianX-Gamesという大きな大会があるからだと思うし、タイでも2,3ヶ月に1回は規模は小さいけれども、大会が行われているからこそだと思う。とにかくアジア全体のレベルが確実に上がっているね。
それと、僕らはケビン・ジョーンズが考え出したトリックをニュースクール、それ以前をオールドスクールと分けて考えたりするけれど、彼らにとっては、見たことの無いトリックが全て「ニュースクール」で、僕らがオールドスクールと思っているトリックも、彼らにとってはニュースクールの技と同じなんだ。境目がない。
彼らを見るまで、僕にはフラット先進国のライダーとしてのプライドがあったけれど、コナゴナに打ち砕かれた。なんかそれでヘンなコダワリが消えた。口で言い表すのは難しいけれど、吹っ切れたね。なんだか。