●岡村 旭インタビュー ~ Zero ~
2002年にCream MagazineのメインフォトグラファーManuと編集長Alainが初めて日本のKOGに訪れた時に行われたインタビューですので、現在の状況と違うことが多々ありますがご了承ください。
初めて旭を見たのは僕が自転車をはじめてまもなくの頃、そのころ最も大きなフリースタイルの大会だったJFAを見に行った。そのプロクラスに、まだ中学生くらいの幼い顔をした体の小さな子なのに、リア系、フロント系、ありとあらゆるトリックを次から次へと決めているライダーがいた。それがアキラだった。あれから7年、世界のトップライダーから一目置かれるライダーへと成長した彼は、長年在籍したDragonflyからAresへと移籍を果たし、新たな一歩を踏み出そうとしている。そんな彼に今回、インタビューすることが出来た。
まず名前、年齢、ライディング歴を教えて。
岡村 旭、1977/12/24 生まれ。24歳。ライディング歴は11年。
旭って本とか読むの?
小学校の「風の又三郎」とかしか読みきったことがないねん。マンガは読むけど。
ベルセルクとか?
ベルセルク、いーねぇ。あと手塚治虫のマンガも好きやね。「火の鳥」とか大好きで、Tシャツとかあったらマジ買いたい。
好きな音楽とかはある?
昔はこだわりとかあったけれど、最近はなんでも聴くね。モー娘からヒップホップから。誰かがかけてたり、いい曲だと思えばジャンルに関わり無く好きやね。
旭がBMXに関して一番影響を受けた人って誰?
師匠(荒木ヨシヒコ)かな。師匠はなんでもやる人で、絵も描くし、音楽もやるし、努力家でどれもそこそこのレベルまで行く人やったね。俺が始めた頃には、その人はもう2年くらい乗っていたんやけれど、10年くらい前なのに早くからどうやったらBMXが日本で大きくなるか、BMXで生活するにはどうしたらいいか、みたいなことを考えていて、それより何より人間的にもすごく出来た人で、始めたばかりのころは俺に手取り足取り教えてくれたりもして、ライディングというより人間的にかなり影響を受けたんよ。
ただ師匠は努力家なんだけれど、1つのことを極める、っていうことが苦手で、師匠は、芸には人に見せるのが好きで、見て見て!って芸を見せるのが「パフォーマー」、そういうことを意識しなくてやっていて、知らず知らずのうちに回りに影響を与えているのが「アーティスト」って考えていて、「俺はアーティストになりたい」って言っていたのを覚えてる。
でも師匠と乗って何年かが過ぎて、俺がどんどん上手くなってくると、師匠と自然に離れていってしまったんよ。お互いの道が離れていった、って感じで、気まずくなって、ってわけでもなかったんやけどね。
ライディングに関してだけれど、ノーブレーキライディングに関してはどう思う?
ノーブレーキ?いやブレーキはあったらあったで使うし、無かったら無かったで別に使わんでもいい乗り方を考えるだけやね。特にブレーキをつけてないからカッコイイ、とかそういう風には考えへん。たまたまブレーキが壊れたとかそんなんでブレーキが無かったりするだけで。あ、ただ普通に乗るならブレーキは絶対必要です!(笑)
旭のシグネチャーフレームは作りたいと思う?
思うね。材質はクロモリだね。アルミだとしならないからマトモに乗れへん。特に最近切り返し系のトリックをやっていて、改めてクロモリのしなりの重要さに気づいた。ジオメトリー的には俺は「普通の」ジオメトリーがいい。ごくごくシンプルな、強いていえばE.Tの時のフレームの形が好きやね。なんの変哲も無いジオメトリー。
最近はみんな軽量化にやっきになっているけれど、俺の場合、まわりでヤンマーやヒロ、高志とかが「あっちで何グラム、こっちで何グラム」って軽量化を計っているのを見て、なんか俺も「あれ?もしかして乗り遅れた?」って思ってちょっと軽くしてみようかな、って思ったくらい。それと自転車をハイテクにするのは、なんかパーツに頼っているみたいでキライやね。BMXに乗って6年目くらいのときは乗られへんフレームも多かったけれど、今はどれもいいフレームばかりやから、文句はないねん。
ちょっとヘビーな質問になっちゃうけれど、去年、旭のお父さんが亡くなって、アキラが変わったように見えたけれど、実際のところはどうだろう?
実際、自分が変わったかどうかは自分では分からんけれど、経済的な面でも、金がなくなっちゃった時とか、「とーちゃん金くれー!」とか言って、余裕で金借りてたりしてたけれどそれも出来なくなったし、なにより人のあり方を考えるようになった。自分にたとえ才能があっても、それを伸ばしてくれる友達がいなければ何も出来ないし。何に対しても「大切」と思うようになった。もう何も無くしたくないんよ。
それと、最近0(ゼロ)について考えるようになった。つまりゼロって損も得もしていない、ってことなんよ。例えばこのインタビューは、アランが最初俺にインタビューしたい、と思って、竹生に頼むわけやん。それで竹生は「俺に任せてくれた」って喜んで俺にインタビューするわけやん。で、俺も竹生もそれに時間を掛けることになるけれど、俺は自分の考えを他の人に分かってもらえて、竹生は自分がやり遂げた、って達成感があったりするわけやん。で、アランにインタビューを見せれば、アランも満足するわけや。そうやって最後まで行った時に、途中苦労するけれど、最後にはみんな満足している。それが俺のいう皆「0」になったってことなんよ。もしどこかで1だったとすると、その人は「こんなにしてもらっちゃっていいのかな?」と疑問に思ったりするし、かと言って-1だとすると、不満が残るわけや。でもゼロならみんながハッピーになれる。誰かがアクションを起こして0から外れたら、0に戻したい、と思うんよね。0になれば、そこから新しいことが出来るし、新しいことを始めるには0からじゃないとダメだと思うんよ。説明するのは難しいけど。
Aresに移った理由は?
父ちゃんがずーっと言っていたのもある。それと俺ってすぐ「あ、そっちのほうがいい」ってフラッとなりそうに見られるけれど、実際、そういう人間関係がからむことって結構悩むんよ。海外の広告にも俺の写真とか乗っているし、日本でも俺をあてにしてくれている人もいるわけやん、実際。そういうこと考えると行けないみたいなところがあって、でも、友達とかと話したりして上がったり、今日はなんか気分がいい、って時あるやん。そういう時にチャリに乗ると、やっぱり調子いいんよね。いいアイディアが浮かんでくるんよね。そういった(精神的)土台をしっかりしないといけない、とはずーっと思ってたンよ。
で父ちゃんが死んで、さっきも言った「人間のサイクルのあるべき姿」っていうのが前よりハッキリ見えるようになって、それに基づいて考えたときに、気分良く乗ったりすることや、自分が自転車に乗っている理由とかを全てひっくるめた「サイクル」が、Aresに移った方が上手く回る、って思ったんよ。
オリジナリティについてはどう考えている?最近の、技をシンプルにして、つなぎを省いたり、っていう方向性とか気にしたりする?
技を省く、とかシンプルにする、って言うのは無いね。あんねぇ、練習をして、沢山の技を持つ、っていうのは大切よ。でもそう考えていたら沢山の持ち技を、色んな方法で繋いで、っていうのが一般的な方向かもしれんけど、俺の場合は、いやみんなそう考えているのかもしれんけど、「体をこういう風に回したい」とか、自転車の上で歩いてみたいとか、どういうのがカッコいいポーズかとか、そういうこと考えるんよ。
俺らがこんだけ長い間自転車乗っている、っていうのは、最初みんなハイハイから歩けるようになった、っていうのと同じなんよ。でもまだ、「失敗するかもしれん」って考えが頭に浮かぶんよ。
「技術」自体にこだわってしまったら、あれは難しい、とか技自体を意識しちゃうんよ。「こういう動きがしたい」と思ったらすぐやりたいやん。でも技術にこだわっていたら、「あれって難しいよな」って俺も思うし、それがイヤなんよ。そういう見方を変えていきたい。
でも普通の人が見る、となったら競技的なものも必要だし、そうなるとそういった「技術」的な見方も必要になる。それは納得しとるんよ。それもそれで楽しいと思うし。
旭にとってKOGとは?
KOGは俺自身も楽しいし、みんなも楽しいからいる。競う、っていうのも好きやね。大会に行けば自分の中で色んなものが学べるし、みんな大会には自分を見つけるために行くんよね?だからちゃんと自分の考えを持って行くことが大切やね。KOGもそうだけれど、大会では沢山問題が出てくるやん。でもそれはいいことなんよ。それをキッカケにしてみんな考えるからね。俺も考えるし。大会は多くの人の考えが集まる場所だし、その沢山の考えに触れたい。
X-Gamesに関しては?
X-Gamesは手っ取り早いと思うんよ。沢山の人間がいるし、大人も子供もいるし、自分が見せたいものを見せるのに、自分的にもやりやすくなるし、多くの人に見てもらえる機会だよね。自分を見せたい願望もあるんよ。そういうのもずっとやって行きたいし、他のライダーにもそういう願望があるなら、行け、って言いたいね。それが無いんならあんまり意味がないね。もしX-Gamesって言葉が耳に入った、ってことは無意識にでも意識している、ってことで、それに行かないってなると、自分にウソをついていることになるんよ。
光太郎が「旭は自転車で何をしていきたいの?」って聞いてっていっていたけれど?
何でみんな上に行きたがるんだろう?でもそれがあるから色々開拓が出来るやん。人間は空を飛びたい、とか早く走りたい、と思う欲望があるけれど、最近はそれが宇宙に行きたいとかもっと広がっていて、そういう地球規模の人間の考えを、果たして自転車にも当てはめられるんだろうか?自転車で遊ぶってことが、人間自体がいい方向に押しているのか、っていうことが気になる。
でも、もっと身近なところではとりあえず自転車と友達になりたい。で自転車を通してみんなと友達になりたいね。
夢は?
みんなが楽しんで自転車に乗れる場所を作りたい。街みたいな。俺が引っ張っていくかもしれないし、別のもっと大人的な考えをもった人が主導権を握っていくかもしれない。とは言ってもこだわってはいないんよね。ビデオを作りたいと思ったら作るし、ツアーをやりたいと思ったらやるし。今は1人では何も出来ないってわかったから、自分のやりたいことも実現したいし、人の夢も手伝いたい。そうは言っても、俺は、本当に身近にある状況を掴むのが凄く苦手なんだよね。それでも今までやってきたことは、何にも考えなかったとしても、後で考えても結構いい線行ってたりするんだよね。本当にそれをしたい、と思っていたら、無意識にしたとしても、正しい方向にしか行かんと思うんよね。
Sponsor : Dub Factory, Ares bikes, 88, Da Kine, Axion, 430, Yellow Fever, Program